中島勝祐作品集(三)/松・竹・梅

なかじま・かつすけ・さくひんしゅう(さん)/まつ・たけ・うめ

中島勝祐

なかじま・かつすけ

VZCG-750 (CD) 3,300円(本体 3,000円)

発売日: 2011年5月25日 / ジャンル: 創作邦楽浄瑠璃長唄


▼曲目一覧

作品紹介

 長唄三味線方の第一人者としての活動に加え、優れた創作舞踊作品を数多く発表し、多くの聴衆を魅了した中島勝祐師。惜しまれつつこの世を去った中島師の代表作品による追悼盤。

 本作には、1969年(昭和44年)と1978年(昭和53年)にクラウンレコードから発売された中島勝祐師の作品を含む2枚のLP音源3曲と(*)、円熟期を迎えていた2000年(平成12年)の紀尾井小ホールでの「第3回りさいたる」の模様を収録したプライヴェート盤ライブ録音CDから、「からかさ俄」を収録しています。

(*)お詫びと訂正
本CDのブックレット内の中島勝祐師の年譜で、「1967年(昭和42) 自作の「松・竹・梅」「水の怨」「むかし小六節」をクラウンレコードから発売。」としていますが、正しくは、「松・竹・梅」が1969年(昭和44年)の発売(SW-5008)、「水の怨」と「むかし小六節」は1978年(昭和53年)の発売(HW-6012)となります。ここに記して訂正いたします。

 「松・竹・梅」は、1968年(昭和43年)の第1回東音創作会で初演。本CDの音源は翌年に長唄「安宅松」(富士田吉治 作曲)とのカップリングでクラウンレコードに吹き込まれたもので、LPジャケットでは作曲者名が前名の中島雄司となっています。作詞・海津勝一郎、作曲・中島勝祐の両者にとってこれが処女作となりますが、その後二人は数々の作品を世に送り出しました。「松」は情感豊かな浄瑠璃風、「竹」は音色の対比による現代邦楽風、「梅」は純長唄風の作品。以下はLPジャケットに掲載された作曲者自身による解説です。
 「従来の数ある松竹梅ものより離れ、松竹梅にそれぞれあるテーマを置き個々の特色を生かして作曲してみました。松・羽衣 竹・京童 梅・袖の白梅」

 「水の怨」は、1969年(昭和44年)の第1回東音創作会で初演。以下は、1978年(昭和53年)発売のLPジャケットに掲載された作詞者・海津勝一郎氏の解説です。
 「昭和44年夏の東音創作会に初演されたこの水の怨はまず作曲者から発想されました。現代的な判りよさを排して、情感と感覚を重視しようと云うものです。その為詞章は最初の二行ほどだけが私の文章で、あとは十数種の古典詞章から抜いて切り継ぎして作ってあります。――水辺に懸けられた舞台で幸若舞の太夫が舞っています。その舞の中に立現われた平家の公達らしき若武者に室の津の女がからみます。現実とも非現実ともとれるように文脈は整えずに置きました。作曲者は非常に感覚的官能的な音づけで抽象的な悲しみを的確に捕えました。演奏に当っては長唄の三味線の駒を替え、揆を薄くするなどの工夫をこらしてほの暗い音色を作出して効果を高め更に宮田常男の精妙な歌唱、福原百之助の流麗な笛を得て、夜の水に漂っている人間の暗い情感を充分に表現しています。」

 同じく1978年(昭和53年)のLP盤に収録された「むかし小六節」についての、海津勝一郎氏の解説。
 「この作品は軽妙な舞踊の名手として著名な花柳寿恵幸(はなやぎ すえゆき)氏の委嘱によって作られ、昭和51年に初演、その年の芸術祭賞を得ています。
 江戸は慶長の頃、小六と云う美男の馬方が歌った唄が小六節として流行しました。当時の街道には小六を気取った声自慢の馬方が沢山居たことでしょう。その中の一人が宿場の夕暮にふと口ずさんだ小六節が縁で、故郷を同じくする女と馴初めて、恋のひと夜を過ごします。そのあと先の情景を描写したのがこの曲です。作品のヒントになりました小六節は江戸も末頃にはもう消えて了っていますので、ここでは作曲者が新しくメロディをつけており、馬子唄を前後に配して、女との夜のなまめかしさ、巡礼娘との朝のさわやかさの対比を作曲者は鮮明に描出して、舞踊を離れても独立出来る曲になっています。その上藤舎呂雪の作調が街道の気分をよく出して効果をあげています。」

 「からかさ俄」は1970年(昭和45年)の第3回東音創作会で初演された作品です。以下は自主制作CD盤『東音中島勝祐作品展(四)』(NACD-1256)のブックレットに掲載された、作詞者・海津勝一郎氏の解説です。
 「俄(にわか)はユーモアと諷刺に満ちた即興劇で、やがては本格的な喜劇に発展した大阪独自の民俗芸能です。昔は興業もあり、祭礼の折りなども非常に盛んでありました。何でも屋の銭貰いが流行の俄を当て込んでの一人芝居と一人踊り、からかさ一本を道具にして橋の袂に立って大いに稼ごうと計りましたが、人の寄らないすずろ寒さにくしゃみ一つ残してしょんぼりと消え去ります。この情景を長唄に作りましたのがこの作品で、昭和45年東音創作会で初演されました。作曲者の中島勝祐先生は大阪生まれの大阪育ち、その上常磐津、上方唄に親しみ、長唄には珍しく浄瑠璃風で上方情緒を十二分に発揮しての音づけです。」

当財団から好評発売中 CD2タイトル
中島勝祐作品集(一)/創作上方浄るり(VZCG-569)
中島勝祐作品集(二) 創作上方浄るり(VZCG-615)

東音 中島勝祐ホームページ

また中島勝祐師が制作したプライヴェート盤CD『東音中島勝祐作品展(一)~(七)』(全7枚・別売)につきましては、以下の「邦楽の友」社のサイトをご覧ください(こちらのCDに関しては当財団ではお取り扱いしておりません)。
〈邦楽の友/お取り扱いCDリスト: アーチスト 中島勝祐〉

中島勝祐(なかじま かつすけ)プロフィール

長唄三味線方。本名中島雄司。1940年(昭和15)大阪府生まれ。
1948年(昭和23) 花柳幾久英師に師事。
1950年(昭和25) 常磐津吾妻太夫師、文字太夫師、文蔵師に師事。
1958年(昭和33年) 青山学院大学商学部入学。同年、岡安寿晃師に師事。(昭和35年名取 岡安喜久祐となる)
1961年(昭和36) 東京芸術大学音楽学部邦楽科に入学。山田抄太郎師に師事。卒業後、昭和41年に長唄東音会同人となる。
1968年(昭和43) 第一回東音創作会にて「松・竹・梅」を発表。
以来、長唄協会、舞踊協会、舞踊家等からの委嘱作品は、2005年(平成17)の新作「綾衣(赤川次郎原作)」まで100曲を超える。
1969年(昭和44) クラウンレコードから自作「松・竹・梅」を発売。
1978年(昭和53) 「長唄音祐会」を主宰。長唄演奏家としての舞台、TVでの活動の傍ら東京、大阪で門弟の指導に当たる(大阪朝日カルチャーセンター長唄三味線講師就任)。クラウンレコードから自作「水の怨」、「むかし小六節」を含む長唄東音会のアルバムを発売。
1989年(平成1) 松尾芸能財団松尾塾講師。
1996年(平成8) 永年途絶えていた「東音創作会」を復活し、若手の育成・指導にあたる。
2002年(平成14) 長唄の立三味線として優れた成果と、邦楽鑑賞会・東音会と自身のリサイタルにおける卓抜した演奏と新たな和事の世界の展開に対し、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。同年、松尾芸能賞邦楽優秀賞も受賞。
2003年(平成15) 長唄の伝承・振興の大きな成果に対し、第23回伝統文化ポーラ賞優秀賞を受賞。
2006年(平成18) CD『創作上方じょうるり』第一集発売(日本伝統文化振興財団)。
2007年(平成19) 第四回創新賞受賞。CD『創作上方じょうるり』第二集発売(日本伝統文化振興財団)。
2008年(平成20) 横浜能楽堂主催「狂言から生れた人形浄るり」に出演。
2009年(平成21) 芸暦50周年記念演奏会(第32回 音祐会)を国立小劇場にて開催。国立劇場主催「笑のかたち『あたま山』」にて立三味線として演奏。12月24日死去。享年69歳。
長唄東音会理事・男子部部長、岡安会理事を歴任した。

収録曲

1

松・竹・梅

(18'34")

まつ・たけ・うめ

作詞:海津勝一郎 / 作曲:中島勝祐

東音皆川健東音福田克也 三味線東音中島勝祐東音伊勢弥生 鳴物二世藤舎呂雪望月太喜右衛門望月左吉 寶山左衛門望月太八

2

水の怨

(12'03")

みず・の・えん

作詞:海津勝一郎 / 作曲:中島勝祐

東音宮田哲男 三味線東音中島勝祐東音後藤敏之 寶山左衛門

3

むかし小六節

(13'43")

むかしころくぶし

作詞:海津勝一郎 / 作曲:中島勝祐 初世 藤舎呂雪作調

東音皆川健東音福田克也 三味線東音中島勝祐東音後藤敏之 鳴物二世藤舎呂雪望月太喜右衛門望月左吉望月太喜雄 寶山左衛門望月太八

4

からかさ俄

(16'29")

からかさにわか

作詞:海津勝一郎 / 作曲:中島勝祐 初世 藤舎呂雪作調

東音宮田哲男、東音藤倉珘益、東音渡邉雅宏東音村治利光 三味線東音中島勝祐東音簑田司郎東音塚原勝利東音宮田由多加 鳴物二世藤舎呂雪藤舎清之望月太津之望月正浩 中川善雄

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