三善 晃「レクイエム」
みよし・あきら「れくいえむ」
Requiem/AKIRA MIYOSHI
外山雄三指揮、日本フィルハーモニー交響楽団、日本プロ合唱団連合、田中信昭合唱指揮、東京混声合唱団、田原富子 ほか
とやま・ゆうぞう、にほんふぃるはーもにーこうきょうがくだん、にほんぷろがっしょうだんれんごう、たなか・のぶあき、とうきょうこんせいがっしょうだん、たはら・とみこ
収録曲
レクイエム
れくいえむ Requiem(1972) | |||
1 |
Ⅰ(08'58") 1 |
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テキスト:上野壮夫、三好十郎、秋山清、中野重治 / 作曲:三善晃 指揮:外山雄三 日本フィルハーモニー交響楽団 日本プロ合唱団連合 合唱指揮:田中信昭 合唱指揮協力:増田順平 [録音] 1977年3月10日 東京文化会館 日本プロ合唱団連合第7回定期演奏会 実況録音 | |||
2 |
Ⅱ(08'38") 2 |
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テキスト:金子光晴、信本広夫 二飛曹、林市造 海軍少尉、上西徳英 一飛曹、松永篤雄 二飛曹、小薬武 飛曹長、石垣りん / 作曲:三善晃 指揮:外山雄三 日本フィルハーモニー交響楽団 日本プロ合唱団連合 合唱指揮:田中信昭 合唱指揮協力:増田順平 [録音] 1977年3月10日 東京文化会館 日本プロ合唱団連合第7回定期演奏会 実況録音 | |||
3 |
Ⅲ(08'35") 3 |
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テキスト:黒田喜夫、田中予始子、宗左近 / 作曲:三善晃 指揮:外山雄三 日本フィルハーモニー交響楽団 日本プロ合唱団連合 合唱指揮:田中信昭 合唱指揮協力:増田順平 [録音] 1977年3月10日 東京文化会館 日本プロ合唱団連合第7回定期演奏会 実況録音 | |||
4 |
混声六部合唱、尺八、打楽器、十七絃のための「変化嘆詠」 ── 「一休諸国物語図絵」より(19'23") こんせいろくぶがっしょう、しゃくはち、だがっき、じゅうしちげん・の・ための「へんげたんえい」 ── 「いっきゅうしょこくものがたりずえ」より Hengetanei(1975) |
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テキスト:作者不詳 / 作曲:三善晃 指揮:田中信昭 東京混声合唱団 尺八:北原篁山 十七絃:高畑美登子 打楽器:百瀬和紀 鼓:堅田喜三久 [録音] 1976年2月19日 ビクター第1スタジオ | |||
混声合唱組曲「四季に」
こんせいがっしょうくみきょく「しきに」 For Four Seasons(1966) | |||
詩:福田万里子 / 作曲:三善晃 指揮:田中信昭 東京混声合唱団 [録音] 1970年6月30日 ビクター第1スタジオ | |||
5 |
1.秋(02'13") 1・あき |
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6 |
2.冬(02'13") 2・ふゆ |
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7 |
3.春(01'00") 3・はる |
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8 |
4.夏(02'00") 4・なつ |
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ピアノ・ソナタ
ぴあの・そなた Sonate pour Piano(1958) | |||
作曲:三善晃 ピアノ:田原富子 [録音] 1989年6月27〜28日 入間市民ホール | |||
9 |
Ⅰ. Allegro(08'09") 1・あれぐろ |
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10 |
Ⅱ. Andante(05'07") 2・あんだんて |
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11 |
Ⅲ. Presto(06'32") 3・ぷれすと |
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time:0.28 s・
作品紹介
三善晃の代表作である合唱とオーケストラのための三部作『レクイエム』(1972)、『詩篇』(1979)、『響紋』(1984)――その第一作『レクイエム』の、外山雄三指揮/日本フィルハーモニー交響楽団/日本プロ合唱団連合によるライブ録音(1977年3月10日・東京文化会館「日本プロ合唱団連合第7回定期演奏会」)、待望の初CD化。
「レクイエム」の委嘱団体で、日本の合唱史上、実力的にも全盛期を迎えていた四つのプロ合唱団(二期会合唱団、日本合唱協会、東京放送合唱団、東京混声合唱団)が合体した「日本プロ合唱団連合」が、外山雄三指揮の下、日本フィルと共に、作品への深い共感と使命感に満ちあふれ、全身全霊を傾けて演奏した壮絶なライブ演奏の記録。
解説書には、作曲者三善晃がこのCDのために書き下ろした文章「生者と向き会うとき」を収める他、三善晃の音楽を見守り続けた中島健蔵の批評「レクイエムの衝撃」(抄)を特別掲載。
グラフィックデザインの第一人者 勝井三雄が手がけたオリジナル盤のジャケット・デザインを再使用。優れたレコード・ジャケット・デザインとしても名高い印象的な絵柄。
<ライナーノーツ>
三善 晃「生者と向き会うとき」(2007年・新原稿)
三善 晃「弧の墜つるところ」(1985年)
[自作品について]
「生者の裡に」(1972/77年)
「生者として」(1977年・LP解説原稿)
「生の途切れに」(1975年)
「四季に」(1974年)
「ピアノ・ソナタ」(1973/77年)
遠山一行「三善 晃のレクィエム」(1977年・LP解説原稿)
特別掲載:中島健蔵「動機と期待 ―『レクイエム』の衝撃―」(抄)(1972/74年)
『レクイエム』(1971)は、使用テクストを「日本反戦詩集」と「海軍特別攻撃隊の遺書」から抜粋した、混声合唱とオーケストラのための作品。通常「レクイエム」とは死者を悼む音楽の呼称として用いられますが、三善晃の『レクイエム』では、戦争という極限状況を経て、死者たちの側が生きている者たちに自らの死の意味を問いかけ告発するという内容をもっています。爆弾や焼夷弾のごとく降り注ぎ、炎の波となって襲いかかるオーケストラの鋭い響き。切れ切れの言葉を叫び、うめき、彼方へと呼びかける合唱。この音楽が描き出す痛ましく烈しい世界は、しかし、未来の平和と希望と祈りのために、私たちにとって避けることのできない負債であるともいえます。ここには、映像でも言葉でもなく、音楽作品だからこそ心の奥にダイレクトに伝わる強烈なメッセージがあります。
このたび初CD化となる『レクイエム』の演奏は、1972年の初演から5年後、1977年の再演時のものですが、「三善の作品はあまりに衝撃度が強く、聴衆が理解するためには(演奏時間が約25分と短いこともあるので)繰り返して演奏したほうがよい」という主催者の判断で、当日のプログラムは、フォーレの『レクイエム』を間にはさんで、三善作品が前後二回演奏されました。ゲネプロを含め3回の演奏が録音されましたが(16トラック・マルチ録音)、最終的な使用テイクについては記録が残っていません。
三善晃『レクイエム』の委嘱団体である「日本プロ合唱団連合」は四つのプロ合唱団の連合体で、主に70年代を通じNHKのイタリア・オペラ等で華々しい活躍をみせました。『レクイエム』初演時(1972年3月15日・東京文化会館・岩城宏之指揮/N響/日本プロ合唱団連合)には129名、本盤収録の再演時(日本プロ合唱団連合第7回定期公演)は総勢108名が、演奏に参加しています。パート毎の詳細は、二期会合唱団(S 7、A 7、T 6、B 6)、日本合唱協会(S 8、A 7、T 5、B 6)、東京放送合唱団(S 5、A 3、T 4、B 3)、東京混声合唱団(S 11、A 10、T 9、B 11)。
当時、日本プロ合唱団連合の事務局を務めていた小林信一氏(財団法人合唱音楽振興会事務局長)によれば、練習は通常のコンサートの数倍の時間をかけて行なわれ、作曲者三善晃も後半の練習に何度か立ち会って、音と言葉のニュアンスを歌い手に伝えていました。合唱指揮者の田中信昭は、四つの合唱団をかけ持っての練習に奮闘しました。1977年2月18日(金)NHKリハーサル室にてコーラスの合同練習開始。3月5日(土)18:00‐21:00外山雄三と合唱団の初練習。3月6日(日)13:00‐18:00オケの練習。3月7日(月)10:30‐16:30外山雄三と合唱。3月8日(火)午前中オケのみ、午後は合唱とオケの初合わせ。3月9日(水)10:30‐16:30オケと合唱。3月10日(木)本番当日13:00から東京文化会館Aリハーサルにて最後の全体練習。引き続き17:00ゲネプロ。19:00開演、東京文化会館(二回演奏)。
『変化嘆詠(へんげたんえい)』(1975)は、夜毎寺に現れる三体の化け物を僧一休が回向し弔う物語を題材とした作品。語りと謡を思わせる静謐な歌唱から始まり、やがて邦楽器の激しい音の散乱を伴って壮絶な響きのうねりを現出させ、美しさ、悲しさ、愛しさ、慈しみが綾をなしつつ、やがて安らかな虚無の広がりへと回帰していきます。オリジナル・マスターテープからの最新リマスタリング。
混声合唱組曲『四季に』(1966)は、2007年春に逝去した詩人福田万里子の硬質なイメージを繊細にかたどった、シュルレアリスティックな結晶美を感じさせる作品。8チャンネルでの録音後に、定位や音質などの大胆かつ精密な編集が施され、電子音楽を思わせる不思議な音響空間を醸し出しています。3枚組LP「三善晃の音楽」(VX-5/7)[昭和45年度芸術祭優秀賞受賞]からの収録。初CD化。
『ピアノ・ソナタ』(1958)はフランス留学帰国後に結実した作品[毎日音楽賞受賞]。半音階的な動機が緻密に展開され、瑞々しい響きと形式的構成感が統合された初期を代表する名曲。ダイナミックにきらめく音の粒子。疾走するモノクロームの幻影。関西を拠点に活躍したピアニスト故田原富子(たはら とみこ)のCD「現代日本ピアノ名曲選」(VDC-1415・廃盤)からの収録。デジタル録音。
今回のCD化に際しては、全4曲とも、オリジナル・マスターテープを使用した最新リマスタリングを行なっています(ビクターK2システム使用)。『四季に』では全般的にハム音や編集時のノイズが目出ちますが、すべてマスターテープに因るものなので御了承ください。
【三善 晃 (みよし あきら) プロフィール】
作曲家。1933年東京生まれ。3歳の頃から自由学園の「子供ピアノ・グループ」でピアノ、ソルフェージュ、作曲を学び、小学校に入った頃から平井康三朗に作曲とヴァイオリンを師事した。
1951年東京大学文学部仏文科に入学。在学中の1953年、「クラリネット、ファゴット、ピアノのためのソナタ」が第22回日本音楽コンクール作曲部門第1位、1954年「ピアノと管弦楽のための協奏交響曲」が第3回尾高賞、文化庁芸術祭奨励賞を受賞し注目される。
1955年給費留学生としてパリ音楽院に留学、アンリ・シャラン、レイモン・ガロワ・モンブランに師事。アンリ・デュティーユの影響も受ける。1957年帰国、東京大学に復学し1960年に卒業。この頃から毎年のように大作を発表しており、管弦楽、室内楽、歌曲などのほか、多くの合唱曲がある。
1985年三部作「レクイエム」、「詩篇」、「響紋」の全曲演奏「作曲家の個展´85 三善晃」により、昭和60年度文化庁芸術選奨文部大臣賞を受賞。1995年から1998年まで「夏の散乱」、「谺つり星」、「霧の果実」、「焉歌・波摘み」と毎年オーケストラ作品を発表。「焉歌・波摘み」では自身6回目の尾高賞を受賞。1999年3月には初めてのオペラ<支倉常長「遠い帆」>を発表(サントリー音楽賞受賞)。
「Miyoshiピアノメソード 全8巻」を刊行し、ピアノ教育にも力を注ぐ。
1974年から95年まで桐朋学園大学学長、1996年から2004年まで東京文化会館館長を歴任。
1999年12月芸術院会員。2001年11月文化功労者に選ばれる。