竹本住大夫 伊賀越道中双六「沼津の段」
たけもと・すみたゆう・いがごえどうちゅうすごろく「ぬまづ・の・だん」
Takemoto Sumitayû: Numazu-no-dan from Igagoe dôchû sugoroku
たけもと・すみたゆう
収録情報
2008年5月28日紀尾井小ホール
片面・一層/STEREO/COLOR/16:9/リージョン・ALL/NTSC/109分/MPEG 2/ドルビーデジタル/オリジナル(日本語)/複製不能/レンタル禁止
ご注意
このDVDのビデオフォーマットは日本、北米、カナダなどのNTSCビデオプレイヤー対応となります。ヨーロッパ、南米、中国のビデオプレイヤーはPAL 方式となりご覧頂けませんが、機種によってはNTSC方式でも視聴できます。パソコン内蔵のビデオプレイヤーならばすべて視聴可能です。リージョンコードはFREE(全世界対応版)です。
収録内容
(77'45") 義太夫 伊賀越道中双六「沼津の段」ぎだゆう・いがごえどうちゅうすごろく「ぬまづ・の・だん」 | |||
浄瑠璃:竹本住大夫 三味線:野澤錦糸 ツレ・胡弓:鶴澤清志郎 | |||
1 |
東路に、ここも名高き沼津の里、あずまじに、ここもなだかきぬまづのさと、 |
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2 |
稲叢蔭より、「旦那申し、お泊りまで参りましょうかい。いなむらかげより、「だんなもうし、おとまりまでまいりましょうかい。 |
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3 |
「ハハハハハ」と、道の伽する笑い草、「ははははは」と、みちのとぎするわらいぐさ、 |
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4 |
跡見送って十兵衛、「コレ親仁殿、この娘御よりほかに、あとみおくってじゅうべえ、「これおやじどの、このむすめごよりほかに、 |
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5 |
何心なき話の合い紋。一々胸に応ゆる十兵衛、なにこころなきはなしのあいもん。いちいちむねにこたゆるじゅうべえ、 |
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6 |
お米は一人物思い、心にかかる夫の病気、およねはひとりものおもい、こころにかかるおっとのびょうき、 |
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7 |
「恥ずかしながら聞いて下さりませ。「はずかしながらきいてくださりませ。 |
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8 |
嘆きの端々つくづくと、聞き取る十兵衛。なげきのはしばしつくづくと、ききとるじゅうべえ。 |
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9 |
跡に親子は顔見合わせ、金取り上げて、あとにおやこはかおみあわせ、かねとりあげて、 |
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10 |
跡にお米は身ごしらえ、続いて出でんとするところへ、あとにおよねはみごしらえ、つづいていでんとするところへ、 |
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11 |
慕い行く。げに人心さまざまに、したいゆく。げにじんしんさまざまに、 |
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12 |
親の心を察しやり、「ムそうあろう、心底至極もっともじゃ。おやのこころをさっしやり、「むそうあろう、しんそこしごくもっともじゃ。 |
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13 |
平作苦しき目を開き、「俺ゃ俺ぁこなたの手にかかってへいさくくるしきめをひらき、「おれゃおれぁこなたのてにかかって |
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14 |
対談たいだん |
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出演:竹本住大夫、山川静夫 |
time:0.34 s・
作品紹介
文楽の人間国宝、竹本住大夫が語る渾身の「沼津の段」。
2008年5月28日、紀尾井小ホール(東京)で行われた「住大夫三夜*」の第三夜、親子の情愛と切ない別れを描いた「沼津の段」をライブ収録。文楽の最高峰による、迫力あふれる語りを、DVD映像であますところなくお届けします。
特典映像として、当日、舞台で行われた山川静夫(古典芸能評論家)との対談もあわせて収録。興味深い芸談とともに、住大夫の素顔を垣間見ることができます。
*「住大夫三夜」は、2006年から3年にわたって催された(財)新日鐵文化財団の主催公演で、住大夫の素浄瑠璃(文楽の人形がつかない義太夫節だけの演奏)の会です。
企画・制作・著作:財団法人 新日鐵文化財団、財団法人 日本伝統文化振興財団
収録情報:2008年5月28日、紀尾井小ホール(東京)
【収録内容】
伊賀越道中双六「沼津の段」
浄瑠璃:竹本住大夫
三味線:野澤錦糸
ツレ・胡弓:鶴澤清志郎
(特典映像)対談 竹本住大夫×山川静夫
【DVD附属解説冊子】
エッセイ「義太夫の値打」(山川静夫)
曲目解説(竹内道敬)
「沼津の段」詞章(監修:竹内道敬)
竹本住大夫インタビュー「渾身の『語り』で『情』を伝える」
英文解説(解説英訳 ロビン・トンプソン)
English Notes Enclosed
【出演者プロフィール】
竹本住大夫(たけもと すみたゆう)
1923年大阪生まれ。誕生後間もなく六世竹本住大夫の養子となり、幼少期から義太夫の手ほどきを受ける。46年二世豊竹古靭太夫(後の豊竹山城少掾)に入門し、豊竹古住大夫の名で初舞台。父住大夫、十世若大夫、八世綱大夫、四世越路大夫、六世鶴澤寛治、二世野澤喜左衛門、十代竹澤弥七の指導を受け、深い解釈と叙事的な力強さを持つ語り口に到達。85年七世住大夫を襲名。89年重要無形文化財(人間国宝)に認定される。2002年芸術院会員。05年文化功労者顕彰。80歳を過ぎてなお、力強く情のある語りで文楽の人気を背負う第一人者。
【曲目紹介】
「伊賀越道中双六」
天明3年(1783)4月、大坂竹本座で初演された。近松半二ほかの合作。
題材は寛永11年(1634)11月6日、伊賀上野の鍵屋の辻で起こった敵討ちで、荒木又右衛門と渡辺数馬が、数馬の弟の敵、河合又五郎を討ったという実話をモデルにしている(作品では実名を避け、時代も変えている)。
題名が示すように、敵討ちを主題に鎌倉から始まり、郡山、沼津、藤川、岡崎、伏見、伊賀上野へと旅をする「道中双六」である。なかでも「沼津」がもっとも人気が高い。
「沼津」の段には、討たれる者も討つ者も、その助太刀も登場しない。しかし、敵討ちは決して当事者だけの問題ではなかった。敵討ちをめぐる過酷な運命に巻き込まれた貧しい庶民の平作一家は、心ならずも娘と息子が敵と味方に別れ、父は命まで捨てることになる。